My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
とりあえず私たちは階段を上がってすぐ右の部屋に入った。
部屋中央に小さな花瓶の乗った丸テーブルが置かれ、それを挟むようにして二つのベッドが配置されていた。
最後にラグがドアを閉めるのを見計らって、私はすぐに声を掛ける。
「どういうこと?」
「知らねぇよ」
面倒そうにそれだけ答え、彼はテーブル向こうの窓からすでに下を覗いているアルさんの元へ近寄った。
「どんな奴らだ?」
「見た目盗賊って感じ。ってか盗賊だろアレどう見ても」
ラグも窓から下を見下ろして、そして眉を寄せた。
「あの野郎、どっかで……」
「あの子と出逢うきっかけになった野盗どもだなあれは」
「え!?」
セリーンの言葉に私はすでに二つシチューの置かれた丸テーブルに自分のシチューを置き、窓へと駆け寄った。アルさんが場所を空けてくれ私はそこからそっと下を覗く。
先ほどまで私たちがいた広場の方からこちらに向かって偉そうに歩いてくる5人ほどの男たち。その風貌はアルさんの言うとおり盗賊にしか見えなかったが、その中でも一番先頭を歩く男だけは少し高価そうな服を着ていた。そしてその男の顔には見覚えがあった。
(――そうだ。確か自分はストレッタの術士だって豪語していたくせに全然大したことなくて、怒ったラグに吹き飛ばされたヤツ!)
取り巻きの顔までは覚えていなかったけれど、確かにあの時の盗賊達に間違いなさそうだ。
ここはランフォルセのすぐ隣の国。私たちがフェルクやノーヴァに移動している間にこの国に足を延ばしていてもおかしくはない。
「なんだ、知ってる奴なのか? よりによってお前の名前を騙るなんてある意味大物だなアイツ。で、どうするんだ?」
アルさんがくっくっと笑いながらラグを見た。彼はなんだかこの状況を楽しんでいるように見える。
「あの時のように術で吹き飛ばしてしまえばいい」
「てめぇは魂胆丸見えなんだよ」
セリーンを睨み見て言うラグ。
――確かにここで術を使ったら今度こそ確実にセリーンは彼に飛びかかりそうではあるけれど。