My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
「……でも、さっきの女将さんの様子だときっとこの村で酷いことしてるんじゃない? 早くあれは偽者だって教えてあげなきゃ!」
「んで本物はオレだって言うのか? アホらし」
「アホらしいって、じゃぁどうするの?」
あの時のようにもっと怒るかと思ったのに、ラグはただひたすら面倒そうにさっさと窓から背を向け椅子に腰かけてしまった。
――自分の名前で悪さされて、彼は悔しくないのだろうか?
彼がそんな態度だからか、こちらが段々と腹が立ってきた。
(こんなこと放っておいたら、どんどんラグのイメージ悪くなっちゃうのに!)
なんだか無性に悔しくてたまらなかった。
でもラグは何でもないふうに、一番量の減ったシチューを自分の前に持ってきてスプーンを手にした。
「……どうもしねえよ。言ったろうが、ここにはお前らが休むためだけに寄ったんだからな」
「でも!」
「いいからお前もさっさと食って寝ろ!」
そう怒鳴られてしまい、また私は何も言えなくなってしまった。
「ま、飯時にっていうんだから、ただ単に飯食いに来てるだけかもしんねーし、どんなもんだか少し様子見てよ、余りに酷かったらまた考えるってことで、とりあえずあったかいうちに食っちまおうぜ」
アルさんの意見にセリーンもそうだなと同意し、窓から離れドアの方へと歩いていった。
「カノン、向こうの部屋へ行こう」
「え?」
「あれ? 向こう行っちゃうのかよセリーン」
「当たり前だ」
「なんだよ~、ぐっすり眠れるまで傍にいてやるのに」
「早くシチューを持って行くぞカノン」
アルさんを無視してさっさとドアを開け出て行くセリーンを私は慌てて追う。
――そういえばセリーンは最初からずっとシチューを手にしたままだった。元々この部屋に長居するつもりはなかったということだろうか。
「ちぇ~、つれねぇの。――あ、カノンちゃん」