My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2

8.戸惑い


 次に目が覚めたとき辺りはもうすっかり暗くなっていた。

 ――どのくらい寝ていたのだろうか。
 起き上がりたかったけれど顔に当たる空気がぴんと冷えていて、毛布から出るのにはかなりの勇気が必要だった。
 昼間はそうでもなかったけれど流石に日が沈むとここも相当に寒いみたいだ。
 ノーヴァの宿はペチカのお蔭で暖かかったが、この村にはペチカは無いのだろうか。

 目を凝らして室内を見回して、そこでセリーンがベッドにいないことに気付く。

(隣の部屋ってことはなさそうだし……下かな?)

 暗闇のせいで真夜中のように感じるがひょっとしたらまだ夕飯時なのかもしれない。

 セリーンはもう起き上がって平気なのだろうか?

 私は思いきって毛布を外してベッドから降り、鳥肌が立つのを感じながら急いで壁に掛かっていた防寒具を身に纏った。
 寒さは仕方ないとして、熱があるとき特有のだるさがすっかり消えていた。頭も試しに振ってみるが全く痛くない。

「よし、治ったっぽい!」

 思わず声に出してガッツポーズをとっていた。そして同時にホッと胸を撫で下ろす。

 ――これで皆に迷惑を掛けることも心配を掛けることもない。

 そうとわかると、いよいよセリーンのことが心配になった。
 私は念のため音を立てないよう静かに廊下に出る。すると思った通り階下はまだ明るく人の気配がした。ほのかな良い香りに思い出したように胃が空腹を訴える。

(私の分まだあるかな?)

「おい」
「!?」

 階段に向け廊下を一歩踏み出すと同時、背後から声を掛けられびっくりする。

「ラグ!」
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