My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
「ラグ?」
「オレの考えが甘かったんだ!」
「え? な、何が?」
急に口調を荒くした彼にわけがわからず焦る。何かまた怒るようなことを言ってしまっただろうか。
と、彼はゆっくりと額から手を外し、そのまま自分たちの部屋のドアに手を掛けた。
「ちょっとこっち来い」
そう言ってドアを開け中に入っていく彼に、私は首を傾げながらもついて行く。――廊下では出来ない話なのだろうか?
中に入りドアを閉めると彼はスタスタと奥へ歩いていきベッドにどかっと腰を下ろした。
室内は蝋燭の灯りでほのかに明るかった。
ベッドの前まで行って改めて訊く。
「甘かったって、何が?」
「……あのグラーヴェ兵だ」
「あぁ、フィエール?」
彼はこちらを見ないまま続ける。
「あの野郎がノーヴァで休むことくらい、ちょっと考えればわかることだったんだ」
「そう、なの? でも、セリーンも私もどうにかこうして助かったんだし。……まぁ、セリーンはまだ心配だけど」
「そうじゃねぇ!!」
その怒声にびくりと身を竦める。