My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2

 顔は見えないけれど、きっと真っ赤になって怒っているのだろう。

「でも、あの状況じゃ」
「どんなときにでも使えるようにしておけ! わかったな!!」
「いや、カノン。無理して歌わなくていいんだぞ。その方がこの子に会えるしな♪」
「てめぇは黙ってろ!」
「しかし、一体どうしたというのだビアンカは」
「知らねぇよ! いいからとっとと離れろー!」
「いやだ」

 そうきっぱりと告げながらセリーンはひょいとラグの身体を抱き上げ、ビアンカから飛び降りた。そのまま暴れるラグを後ろからしっかり抱きしめ雪の上を難なく進んでいく。
 そしてビアンカの目元まで行き足を止めた。

「ビアンカ。おい、大丈夫なのか? ……うーん、やはり意識が無いようだな。気を失っているのか? まさか、死んだわけではあるまいな」
「うそ……!」

 私も流石に焦ってずるずるとビアンカの身体を伝うようにして雪の上に降り立った。
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