My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
「アホか! こうなることは目に見えてただろうが!!」
「まーたそうやってすぐ怒るー。だからそんなに目付き悪くなるんだぞー。昔はあんなに素直で可愛かったのになー」
「だっから昔の話はすんなって言ってんだろーが!!」
そしてまた二人の漫才もどきが始まってしまった。
――納得がいかないけれど、その後セリーンと食堂に下りてすぐに思い知る。
女将さんの私たちを見る目は昼間とは全く違っていた。
それは昼間あの偽ラグの方に向けられていたものと、同じだった。
昼間と同じ美味しそうなミルクシチューが無言のままテーブルに出された。
お礼を言いながら顔を上げるが、その視線はやはり冷たい。
「もう体調はいいのかい?」
それでもそう訊かれ、私はほっとして答える。
「はい! お蔭様でもうすっかり」
「そうかい。なら、朝には出ていっておくれね」
そして女将さんは踵を返し厨房へと入ってしまった。
――声が、出なかった。
「カノン、ほら早く食べろ」
「う、うん」
セリーンに促され私は少し震える手でスプーンを取った。
そのままシチューを口に入れるが、あんなにお腹が減っていたのに味がわからなかった。
セリーンとも何も話せず、ただ機械的にスプーンを口へと運んでいく。
皿が空になり、厨房の方に向けて「ごちそうさまです」と声をかけたが、答えはやはり返ってこなかった。