My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2


 階段を上がると、アルさんがドアからひょっこり顔を出していた。

「二人ともおやすみ。また明日な」

 その笑顔に答えるように、私も笑顔で「おやすみなさい」と挨拶した。
 部屋に入りドアを閉めるとセリーンは丁度ベッドに腰を下ろしたところだった。

「カノンが気に病むことではない」
「え? ……うん。でもやっぱり納得いかないっていうか」

 この、先ほどから胸にモヤモヤとわだかまっている感情はなんだろう。怒りにも似ているけれど、違う。

「だって、アルさんがあの人達を吹き飛ばさなかったら、この村の人達はずっと怯えたままだったのに」

 ――そうだ。つい最近、私は同じ感情に出逢っている。
 フェルクレールトでクラール君を助けるために歌ったあの時。しかし銀のセイレーンと知った村の人達は必死に私から逃げていった。あの時は、とにかく悲しくて……。

(そっか。悲しいんだ)

 アルさんだってあんなふうに笑っているけれど、本当は悲しいに決まっている。きっと、ラグだって……。
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