My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
翌朝。私たちは早々に準備を済ませ、気まずい思いで食堂に降りた。
そこにはパンとミルクだけが置かれていて女将さんはいなかった。
しかし厨房には確かに人の気配があって、宿を出る際アルさんは「昨日のシチューすっげ美味かったぜ。ありがとうな!」と声を掛けていた。
答えは無かったけれど、アルさんは終始笑顔だった。――強い人だなと思った。
そして、誰とも会うことなく私たちはタチェット村を出た。
その後ビアンカに乗り上空から村を見下ろすと、多くの人が外に出ていた。
まるで何事も無かったかのような、平和で、ごくありふれた村の姿。
子供たちが楽しげに走り回っているのを見て、アルさんは嬉しそうに良かった良かったと繰り返していた。