My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
「何すんだ!」
「女性に対してそういう失礼な物言いをするなって言ったろーが! 彼女は、俺の運命の人なんだよ」
「もうそれ聞き飽きたっつーの」
「今度こそ絶対だって! 見た瞬間ビビっと来たんだって!!」
「あーはいはい」
「なんだ~先輩に向かってその口の利き方は~。先輩は敬えっていつも言ってるだろー?」
「は、休みの度に無断出国してる奴を敬えって?」
「うっ」
「しかも理由が運命の人を見つけるためとかアホか」
「いいじゃねぇか! お蔭で見つかったんだからよ!」
「あーはいはい」
そんな取り留めのない会話をしつつ林を抜ける頃には辺りは大分明るくなっていた。
といっても上空は相変わらず厚い雲に覆われていて、いつまた雪が降り出してもおかしくはない。
林の中とは一転、きちんと整地された裏庭を夜中に積もったのだろう新雪に足跡を付けながら進む俺達。
と、ふと思いつき俺は再び声を掛けた。
「お前さ、話が終わったら俺の生徒にくらい顔出せよな」
「そんな時間あったらお前に頼んでまで急いで帰ってきてねぇよ」
「だってお前が居なくなってから双子がずっと元気無くってよー。お前突然出てっただろー? 特に兄の方がボロッボロでさ。ちょっとくらい顔見せてやれよ」
「…………」
全く会う気無いなコイツ。
無言で裏口の扉に手を掛けたラグを半眼で見やった、丁度その時だった。