終着駅は愛する彼の腕の中

「悲しくなるのは、理由があるんだろう? 」


 そう言われると、エイミはギュッと口元を引き締めて黙ってしまった。



 羽弥斗はエイミの隣に座った。

 そしてそっと、エイミの手に手を重ねた。


「罪は犯すほうだけが悪いわけではない、犯させる方にも問題はある。僕はそう思っている」


 重ねているエイミの手が震えている・・・。

 溢れそうな涙をぐっとこらえているのがよく分かる。


「君が本当に誰かを殺していたとしても、僕の気持ちは変わらない」

「でも・・・貴方も言われます・・・犯罪者と一緒にいるって・・・」

「それでも構わないよ。君が世間から非難されるなら、僕も一緒に非難を受ける。そうしたら、もう、一人で抱え込まなくてもいいだろう? 」

「なにを言って・・・」

「だって、人を愛するって。喜びも、悲しみも、怒りも、憎しみも、楽しさも。全部分かち合うものじゃないか? 愛している人が苦しいなら、その苦しみを一緒に分かちあいたい。だから、愛している人が過ちを犯したとしても、僕の中で愛は終わらない。一緒に償えばいいじゃないか。人は過ちを繰り返しているものだよ。犯罪者にならなくたって、どれだけ過ちを繰り返しているか判らないよ」


 羽弥斗はそっと、エイミを抱きしめた。


「もういいから。許してあげよう。自分の事を」

「許す? 」

「そう。世間が何を言っても、先ず初めに許すのは自分の事。どんな自分だって、許してあげる事だよ。罪を犯しても、ちゃんと更生したから君は今ここにいるんだろう? それならもういいじゃないか。自分の事を赦して前に進めば、それでいいんだから」


 ギュッと抱きしめられると、エイミは何も言えなくなった。

 こんなことを言われたのは初めてだった。

 ずっと誰もが自分を責めているだけだと思っていた。

 どうせ犯罪者だから非難されて当たり前だと思っていた。



 こんなに優しくされたのは、どのくらいぶりだろう? 


 そう思うと、エイミの頬に涙が伝った。
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