終着駅は愛する彼の腕の中
(ノエリ。新幹線は、種類が違ってもどこでも走っている。限られていても、線路は繋がっている。ノエリにも、きっと心から繋がれる人が現れる。その時は素直に、その人の気持ちを受け取ればいいんだよ)
ノエリがまだ小学生の幼い頃に、ノエリの父・信秀(のぶひで)が言ってくれた。
新幹線の運転手だったノ信秀は、北の方の新幹線を運転していた為、ほとんど単身赴任で家にはいない事が多かった。
休みの日になるとノエリが学校から帰って来ると、いつもこうして新幹線を一緒に見に来ていた。
帰りには駅前のショッピングモール内にあるレストラン街で、ノエリが好きな物を一緒に食べていた。
信秀はちょっとイカツイ顔をしているクールなタイプのイケメンで、通り過ぎる人が振り向いて見てゆくくらいだった。
背も高くてスラッとしていて、運転手の間でもかなりモテていて乗客にも受けが良かった。
母の江里菜(えりな)は背の高い美人系で、信秀との出会いは新幹線のホームだったらしい。
江里菜は教員で小学校の先生だった。
研修に行くために新幹線に乗る為、待っている江里菜をみて信秀は一目惚れして交際を申し込んだ。
当時から北の新幹線を運転していた信秀だが、江里菜の為に金奈市まで来てくれていた。
元々、信秀の実家は金奈市にあり苦にはならなかったと話していた。
信秀の両親は早くに亡くなり、1人っ子の信秀は家族が出来たら一緒に過ごす時間が沢山欲しいと願っていた事から、金奈市を通る新幹線の運転手に移動希望を出していたが、結局、北の新幹線の運転手のままで終わってしまった。
江里菜は結婚後は退職して専業主婦として家に居てくれた。
個性あふれる信秀と江里菜に育てられ、ノエリは幸せに暮らしていた。
あの事件があるまでは・・・。
信秀と江里菜の事を思いだしながら、羽弥斗に手を引かれ歩いて来たノエリ。
コインパーキングまでくると、ふと足を止めた。