終着駅は愛する彼の腕の中
「一人で・・・帰ります・・・」

 シレっと言うノエリ。

「家に帰るのかい? 」

「はい・・・」

「それなら送って行くよ、デートの帰りだからね」

「いえ。あのアパートうるさいので、知らない車が来ると色々聞かれて面倒だから」

「へぇーそうなんだ」

「はい、なのでここでいいです・・・」

「それなら僕も歩いて一緒に行くよ。それなら、いいだろう? 」


 はぁ? なんでそこまで・・・

 ムスッとしてノエリは俯いた。


「ノエリ。あのアパート、好き? 」

「好きって? 」

「好きで住んでいるの? 」

「・・・別に。・・・あのアパートの家賃なら、払えるから・・・」

「そっか。家賃を払って、ノエリは楽しく過ごせる? 」


 ムッとした目をして、ノエリは羽弥斗を見た。


「犯罪者が、楽しくなんて過ごせるわけないだろ! 」


 そう答えるノエリの目は、どこか助けを求めているような目をしていた。

 私は楽しく何て過ごしてはいけない・・・そう自分にいいきかせているようで・・・。


 その目を見ると、羽弥斗の胸がチクリと痛んだ。


「じゃあ、ノエリはどうしたら楽しく過ごせるの? 」

「どうしたらって・・・無理じゃん・・・犯罪者の汚名があるんだから・・・」


 と、目を伏せるノエリ。


「分かった。とりあえず、帰るのはまだ早いでしょう? もう少し、僕に付き合って」


 羽弥斗はノエリを車に乗せた。


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