終着駅は愛する彼の腕の中
すみれは8年前、羽弥斗が警察官を辞めた時の事を思いだした。
理由はハッキリ話してはくれなかった羽弥斗。
だが、どこか悔しそうな、悲しそうな、それでいて怒っているような目をしていた。
その顔を見て、すみれは羽弥斗が相当何か思い詰めているのだと思ってそっとしておいた。
半年ほど、羽弥斗は自由に旅行して全国を旅していた。
旅行が落ち着くと、瑠貴亜に「新幹線の運転手になる」と言い出して鉄道員の道を目指し始めた。
念願の新幹線の運転手になると、羽弥斗は「新幹線が恋人だから」と言って、本当に恋人にでも会いに行くように仕事に向かっていた。
全国各地を回って、数年たって、金奈市に鉄道博物館が建った頃。
運転手ではなく職員として配属されて落ち着いた羽弥斗だった。
「ねぇお母さん。私、あのお姉ちゃんに会ってもいい? 」
「会ってどうするの? 」
「私は大丈夫だって、話したいの。真犯人が捕まったかどうかは、解らないけど。うちには、強いSPだっているし、怖くなったら運転手さんに送り迎えだってしてもらえるから。心配しなくていいって、ちゃんと話したいの」
「それは、いいかもしれないけど」
「お兄があんなに好きになった人だよ、このまま離れるなんて可哀そうじゃん」
「そうね。ちょっと、時間をくれる? 少し考えてみるから」
「うん」
その頃。
部屋に戻った瑠貴亜は、ずっと昔の写真を見ていた。
それは瑠貴亜が新幹線の運転手だった頃、北の新幹線を運転してた頃の写真。
瑠貴亜と一緒に信秀が写っている写真がある。
「やっぱり似ているなぁ・・・」
そう言って、瑠貴亜はパソコンを開いて何かを調べ始めた。