終着駅は愛する彼の腕の中
女性はゆっくりと顔を上げた。
その女性は・・・ノエリだった。
2ヶ月前より髪を短くして、ボブヘヤーにしている。
茶色いセーターに黒いロングスカートに黒い靴。
ちょっとほっそりしたようなノエリ。
瑠貴亜はノエリの向かい側に座った。
ウェイトレスが来て、注文を取ったあと、瑠貴亜はノエリに一枚の写真を見せた。
「この写真を見て、気づいたんだ。昔の同僚、城里信秀さんの事」
ノエリは写真をじっと見つめた。
「彼は、東北新幹線の運転手でずっと北の方ばかり任されいたけど。出身は金奈市だって、話していた。結婚して、1人子供がいるって話していて、可愛い女の子だっていつも自慢していたのを覚えているよ」
「・・・そう・・ですか・・・」
ウェイトレスが注文したホット珈琲を持ってきた。
瑠貴亜はブラックのまま珈琲を一口飲んで、ノエリを見てそっと微笑んだ。
「初めて会った時、どこかで見覚えがあると思ったんだ。彼を思い出して写真を見たら、似ているから確信したよ。それで、もしかしたらお父さんの思い出の地にいるんじゃないかと思って探してみたんだ」
ノエリは俯いて黙っている。
「ノエリちゃん。ひまわりの事を、護る為にずっと黙っているとしたら。それは大きな間違いだよ」
シレっとしているノエリ。
「お父さんもお母さんも、心不全で急死した事は聞いたよ。それでよけいに、ひまわりが殺されたらダメだと思い込んでしまっているんだね? あの時、まだ、ひまわりは小学2年生だった。真犯人もまだ捕まっていないから。公表したら、ひまわりが狙われる可能性もあると。そう思って、報道しないように言ってくれたんだよね? 」
窓の外を見たまま、ノエリは黙っている。
瑠貴亜は一息ついた。
「ノエリちゃん。うちの家系は、とって複雑なんだよ」