終着駅は愛する彼の腕の中
楽しい朝食を済ませてチェックアウトして、帰路につく羽弥斗達。
電車のに乗る前に、ノエリの家に荷物を取りに行くことになり、みんなで向かった。
バスで15分ほどの田舎町。
バス停のすぐ傍に古いアパートが建っている。
アパートの2階の端っこに住んでいるノエリ。
部屋は1部屋でキッチンとバスとトイレがある。
荷物はそれほどなく、両親の位牌と少しの荷物だけだった。
ノエリは荷物をバッグに全て閉まった。
両氏の位牌は、丁寧に白い布に包んでしまっている。
「あの・・・私の両親のお位牌。持って行ってもいいの? 」
「いいよ、どうして気にしているの? 」
「だって・・・」
「気にすることないじゃないか。ノエリを産んでくれたお母さん、そして大切に育ててくれたお父さんだよ。僕にとっても、大切な人だから」
「はい・・・」
荷物をまとめ終わると、バス停へ向かうノエリと羽弥斗。
バス停では瑠貴亜とひまわりが待っていた。
アパートは引き払い、ちょっとした家具はおいてゆく事にしてある。
鍵は大家さんに返した。
バスで駅まで向かう。
田舎のバスはあまり人が乗っていない。
人口も少なく、バスの本数も少ない。
みんな都会へ出てしまう為、ほとんどお年寄りしか残らない北の田舎町。
人が多いのは駅周辺だけ。
ほんの少しだけしか住んでいなかったが、なんとなく離れるのが寂しく感じたノエリ。
きっとここには、昔住んでいた信秀の想いが残っているのかもしれないとノエリは感じた。
単身赴任で1人で頑張っていた信秀。
こんな寒い北の地で、1人で頑張っていた信秀を想うと、なんとなくノエリの目が潤んだ。
(お父さん、なんで遠くにばかり行っちゃうの? お父さんがいないのは、嫌だ)
小さな頃、ノエリは信秀と離れたくなくてわがままを言ったことがあった。
(ノエリ。お父さんはね、遠くの人にも新幹線に乗ってもらいたいって願っているんだよ。この日本には、沢山の電車が走っている。新幹線だってそれぞれの種類がある。でもね、線路はずっと繋がっているよ。お父さんは、離れていても線路を見てノエリとはいつも繋がっているって思っているから)
信秀は優しくノエリの頭を撫でてそう言った。