ギザギザハートのマイフェアレディ
○茉弥の自室@篤志宅

茉弥(はあ…落ち着かんがよ…。)

広い部屋に、豪奢な調度品。
クローゼットを開いてみると、
たくさんの高価な服がかけられている。

篤志と出会った日からほぼ強制的にこの家に引っ越すことになったのだが、
食事は毎日隣にマナーの先生がついて指導され、
服を買うにも大学へ行くにも、
コンビニにすら送り迎えと護衛がついてくる。

急にリッチな見た目になり、
SPのような人がついてきている茉弥を、
大学の人たちは遠巻きに眺めている。
元カレも、苦々しい顔をしているが、
SPに睨まれ茉弥に近づくことはできない。

茉弥(この状況もだけど…
  本田さんのあの言葉。)

篤志『私は今から茉弥さんとお付き合いをさせていただく者です。』

茉弥(勢いで言った出まかせだろうけど、
  あんな言われたら、嫌でも気になってしまうがね…。)
茉弥(でも…本気なわけない。
  本田さんは有名人で、雲の上のセレブで、おまけにあんなにイケメン…。)

篤志の笑顔を思い浮かべる茉弥。
思わずうっとりしてしまうが、
はっとして首を振る。

茉弥(だめだめ!!
  住む世界が違うんだから、
  一年たったら他人なんだから!!)

そこで、電話の通知音が鳴る。
篤志からのライン。
今まで持っていた携帯は以前手渡してからそのままになっており、
新しい携帯を渡されている。
最新機種。

篤志『こんにちは、茉弥さん。
  今日は夕食ご一緒できそうです。
  食堂でお会いしましょう。』

茉弥(本田さん、今日はごはん一緒か。
  いっつもなんしちょいやっとやろ。)


○篤志宅の食堂

篤志「こんばんは、茉弥さん。
  せっかくなので近くに配膳してもらうようにお願いしたんですよ。
  さ、こちらへ。」

十人掛けぐらいのテーブルの、
L字に食事の皿が用意されている。

普段マナーの先生が控えているのだが、
今日はいないようだ。
篤志に食事を見られるのに緊張する茉弥。

篤志「そんなに固くならないでください。
  今日は会話を楽しみながらお食事しましょう。」

にこっと笑う篤志に、少し気持ちが和らぐ茉弥。

篤志「どうですか、大学のご様子は。」
茉弥「いつも通りです。」
  (すっごく注目あびちゃってるけど…。)
篤志「ここの住み心地はどうです?」
茉弥「はい…、少し落ち着かんです。」

ぎこちない笑顔でそう答える茉弥。
篤志は何も言わずに微笑んでいる。

篤志「今度、仲間内でパーティーがあるんですけど。」
茉弥「はあ。」
篤志「茉弥さんもご一緒にどうかなと思いまして。」
茉弥「パーティー、ですか?」

茉弥(仲間内のパーティー?
  ホームパーティーみたいなものじゃっどか?)

茉弥「少し、興味があります。」
篤志「よかった、
  では、明日ドレスのフィッティングに来させますね。
  それから…」
  「もしよかったら、コンタクトレンズを作ってみませんか?」
茉弥「コンタクト?」
篤志「茉弥さんはお美しいから、
  メガネを外してメイクアップしているところを
  ぜひ拝見したいです。」

赤くなる茉弥。

茉弥(コンタクト…かあ。
  あたしも少しはきれいになれるのけ?)


○後日・メガネを作ったのと同じ部屋@篤志宅

ドレスのフィッティングが来ている。

茉弥(ドレスって…こんなリアルにドレスってこと!?)
  (こんなの着たことない…
  外国の映画でしか見たことねかが!!)

執事「お嬢様、次はコンタクトレンズを作りにまいりましょう。」

○眼科

初めてコンタクトを入れてみる茉弥。

茉弥(あたし…今こんな顔なんだ。)
  (なんだか…不安げっていうか…
  楽しそうじゃねかがね。)

  (こんな顔してたら、
  本田さんに不遇なって言われても
  仕方なかったが。)

  (コンタクト入れただけで変われるかもって思っちょったけど…
  こりゃ気張らないかんね。)
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