ただ好きだから
リビングに戻る二人。


「あ、喉渇いたって言ってたっけ?」


「そうだった」


すっかり、忘れていた。


夏月は、登坂と一緒に冷蔵庫を覗く。


「ねぇ、お酒とお水しか無いね」


「ははっ、ほとんど外食だから」


「そうなんだ」


登坂は水のペットボトルを夏月に渡す。


「ありがと」


二人でソファーに腰掛ける。


「夏月さんのレストランが東京にあったらいいのにな。いつでも食べに行けるもんなぁ」


「んー、東京ねぇ。チャンスがあれば出店したいとは思ってるけど。今の店は条件が揃って美味しい料理が提供出来てるっていうのもあるから」


「あぁ、ケータリングとかは?」


「ケータリング?」


「ライブの時とか、俺たちの食事はいつもケータリングだからさ」


「へぇ、そうなんだ。…ふーん、ケータリングねぇ、やってみたい気もする」


ペットボトルのフタを開けながら、ちょっと考えてみる。


「お、もう企画を練ってる?」


「え、あぁ…」


「マジで考えてる、顔じゃん」


「あ、ごめん、わかった?」


「仕事人だな」


「あんまり仕事とか思ってないんだけどね。好きなことやってるだけだから」


「じゃあ、農業も好きでやってるんだ」


「そうだよ。野菜は愛情をかければかけただけ美味しくなるんだから」


「そんなに楽しいなら俺もやってみたいな」


「え?登坂さんが長靴履いて作業するの?」


「なんでも着こなすから、長靴でも作業着でもオッケーだし」


「職場体験してみる?」


「いいかも(笑)」
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