ただ好きだから
夏月の店は、そこからすぐだった。



畑に囲まれたログハウスが夏月の店だった。



「夏月さんがオーナーなんですか?」



「そう。店で出してる野菜は、こだわり野菜でさ。東京の方の店にも卸してるみたいだし、いつも忙しそうにしてるわけよ」



店に入って行くと、
 


「車庫、借りるわ」



店員に話しかける吉則。



「でさ、修理してる間、彼、待たせて貰える」



「はぁ〜い」



と返事をした、店員が吉則の後ろから来た登坂を、見て目を見開く。 



「え?…あの、もしかして…三代目の」



「ん?知り合い?」



吉則が不思議そうに後ろの登坂を見る。



「あぁ、えっと…」



登坂は、気まずそうに頭をかく。



「三代目の登坂君ですよ〜」



店員に言われて吉則は登坂の顔をじっと見た。



「あれ、テレビに出てる、三代目の?」



「実は…まぁ、そうですね」



「え、マジで?三代目が、俺のトラックの助手席に、乗って来たってこと?」



「そういう…ことですね…」



今度は、恥ずかしそうに頭をかく。



いきなり芸能人が現れ興奮する吉則達だった。



「すごくない?ちょ、でも、俺とりあえずバイク直さないとな。あ、登坂君また後でサインとか、いや写真?あの、とにかく後でな」



興奮したまま、吉則は店の外に出て行った。



「あの、お席にどうぞ」



窓ぎわで、よく景色が見える席に案内された。



花が咲く庭の向こうには一面の畑。



(のどかだなぁ、癒されるわ)
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