寡黙なダーリンの秘めた愛情
「あなた、蓮さんのフィアンセよね。私は重役秘書の赤池といいます」
美咲は自販機から取り出したアイスティを握りしめたまま、由利亜に向き合いお辞儀をした。
「はじめまして。製品開発部メディカルエンジニアの八雲美咲です」
由利亜は肩幅の広さに足を開くと、腕を組んで上から下まで美咲を舐めるように見た。
「いくら会長の頼みだからといって、あなたみたいに垢抜けない女性をお嫁さんにしなければならないなんて蓮さんも可哀想ね」
゛何故、この結婚が会長絡みだと知っているのだろう?...ああ、そうか、蓮さんが話したのか゛
美咲は由利亜を見つめながら、ボンヤリとそう考えて納得していた。
結婚が決まってからも、蓮と由利亜は繋がっている、美咲はそう確信を深めた。
「あなた、私と蓮さんが一緒にいると、いつも私達を見ていたでしょう?」
「ええ、仲良さそうだなと思っていましたから」
「それなら何故結婚を決めたの?あなたならもっと若くて素敵な相手がいくらでもいたでしょう。私から蓮さんを取り上げなくても」
由利亜の目には涙が滲んでいた。
「蓮...城之内部長がそう望まれたから」
バシン!
気付いたら左頬を由利亜に叩かれていた。
痛みに顔が歪みそうになるが、ここで泣くわけにはいかない。
それだけのことを、美咲は彼女にしたのだから。
大切な恋人を゛社長の座゛という餌と引き換えに奪っていく、醜い悪魔だから。
「あんたなんか消えてしまえばいい」
そう言って駆けていく由利亜の目には憎しみが溢れていた。
゛私を恨んでくれればいい。だけど彼の心はあなたのものだから゛
5年前の夏、2人の抱き合う姿を見て蓮を諦めたはずだったのに、結局二人を傷つけてしまった・・・。
少し腫れた左頬をハンカチで冷やしながら、美咲はその日、そのまま早退することにした。
腫れた頬を蓮に見咎められては不味い。
その後、黙って早退したことを心配して、蓮から美咲のスマホに連絡が入ったが、美咲は本当のことは蓮には話さずにいた。
そうして迎えた今日の結婚式。
美咲は、意を決したように立ち上がると、両親の待つ控え室に向かって歩き出した。
美咲は自販機から取り出したアイスティを握りしめたまま、由利亜に向き合いお辞儀をした。
「はじめまして。製品開発部メディカルエンジニアの八雲美咲です」
由利亜は肩幅の広さに足を開くと、腕を組んで上から下まで美咲を舐めるように見た。
「いくら会長の頼みだからといって、あなたみたいに垢抜けない女性をお嫁さんにしなければならないなんて蓮さんも可哀想ね」
゛何故、この結婚が会長絡みだと知っているのだろう?...ああ、そうか、蓮さんが話したのか゛
美咲は由利亜を見つめながら、ボンヤリとそう考えて納得していた。
結婚が決まってからも、蓮と由利亜は繋がっている、美咲はそう確信を深めた。
「あなた、私と蓮さんが一緒にいると、いつも私達を見ていたでしょう?」
「ええ、仲良さそうだなと思っていましたから」
「それなら何故結婚を決めたの?あなたならもっと若くて素敵な相手がいくらでもいたでしょう。私から蓮さんを取り上げなくても」
由利亜の目には涙が滲んでいた。
「蓮...城之内部長がそう望まれたから」
バシン!
気付いたら左頬を由利亜に叩かれていた。
痛みに顔が歪みそうになるが、ここで泣くわけにはいかない。
それだけのことを、美咲は彼女にしたのだから。
大切な恋人を゛社長の座゛という餌と引き換えに奪っていく、醜い悪魔だから。
「あんたなんか消えてしまえばいい」
そう言って駆けていく由利亜の目には憎しみが溢れていた。
゛私を恨んでくれればいい。だけど彼の心はあなたのものだから゛
5年前の夏、2人の抱き合う姿を見て蓮を諦めたはずだったのに、結局二人を傷つけてしまった・・・。
少し腫れた左頬をハンカチで冷やしながら、美咲はその日、そのまま早退することにした。
腫れた頬を蓮に見咎められては不味い。
その後、黙って早退したことを心配して、蓮から美咲のスマホに連絡が入ったが、美咲は本当のことは蓮には話さずにいた。
そうして迎えた今日の結婚式。
美咲は、意を決したように立ち上がると、両親の待つ控え室に向かって歩き出した。