寡黙なダーリンの秘めた愛情
「お父さん、お母さん、今まで育ててくれてありがとう」

いくら政略結婚でも、両親のもとから旅立つことにはかわりない。

こうした一抹の寂しさが美咲の不安を煽ることを両親は知らない。

「ああ、美咲、とても綺麗だよ。蓮くんと幸せにな」

「やっと恵子と私の夢が叶うのね。蓮くんが息子になるなんて嬉しくて泣いちゃいそうよ」

慎太郎と智恵子が嬉しそうにしているのも心苦しい。

だけど、最終的には自分で選んだことだ。

大人として責任をとらなくてはならない。

呆然と佇む高校生の美咲ではないのだ。

蓮と結婚し、子供を産み、喜久蔵を安心させて蓮を社長にする。

蓮と由利亜の関係が続いていても文句は言わない。

それでもいいと、蓮の手を取ったのだから。

「さあ、行こうか。蓮くんが待ってる」

「はい。お父さん」

美咲は父・慎太郎と腕を組み、蓮の待つ結婚式場へと歩いていった。
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