寡黙なダーリンの秘めた愛情
「あら、今日は人が多いのね」

「今日は戌の日ですから」

1月12日、この日は偶然にも戌の日で、お腹の膨らみが目立ち始めた妊婦さんとその家族であふれている。

「美咲ちゃん、ちょっとお守りを見てくるから、ここで待っていてくれる?」

お参りが終わったあと、恵子が美咲を気遣って、休憩所の椅子をすすめてきた。

おみくじやお守りを売る社務所には結構な人がおり、あちこちぶつかりそうで危ない。

「わかりました。ゆっくり選んでくださいね」

美咲は恵子が社務所に向かうのを見送ると、大きなお腹を抱えてゆっくりとベンチに腰かけた。

見上げると雲ひとつない冬空が見えた。

「・・・城之内さん?」

右側から、女性の声が聞こえた。

真っ赤なコートに身を包み、母親とおぼしき女性と一緒にいるその人は、あの松本歩花だった。
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