寡黙なダーリンの秘めた愛情
「いよいよ明日だな」

ベッドに横になり、就寝準備を終えた蓮と美咲は寝室にいた。

美咲を背中から抱き締めるようにして横になる蓮もシャワーを済ませてすっかりくつろいでいる。

NICUでは、退院後のために沐浴の練習やおむつ交換をマスターした。

美咲は直接、育己に乳房を咥えさせて母乳を飲ませる練習を、蓮は美咲が搾乳した母乳を哺乳瓶で飲ませる練習をした。

育己には申し訳ないが、育児に不安のあった美咲は、NICUでの教育、指導を受ける機会を持てたことを感謝している。

蓮だって、美咲の育児?を経験済みとはいえ、美咲が生まれた当時は10歳。

当然、忘れていることも多いだろうし、現に知らないこともたくさんあったはずた。

そう言った美咲に

「美咲との思い出はすべて覚えている。俺の愛をなめてもらっては困るな」

と、本気で呟く蓮。

何だかんだとこの12日間は二人にとってかけがえのない思い出だな、と美咲は考えていた。

「育己は本当に親孝行だな」

突然の蓮の言葉に、美咲は首を傾げる。

「本来なら、育己に独占されるはずの美咲を1週間だけ俺に自由にさせてくれた」

背後から美咲の体をゆっくりとなで回しながら語られる蓮の言葉は、なんとも艶かしくてくすぐったい。

「えっ、そんなこと考えてたの?いっくんは赤ちゃんだよ。ずっと一緒にいるのは当たり前でしょ」

驚いて振り返る美咲の唇を勢いよく奪う蓮。

「俺だって四六時中、美咲と一緒にはいられないのに、当然のようにそれが出来てしまう育己が羨ましい」

何度も何度もキスを続ける蓮の表情は本気だ。

「だが、美咲は俺のものだ。しばらくは共有してやるが、早く自立してもらって、美咲を返してもらわないとな」

生まれたばかりの赤ん坊に何を言っているのか?

本気ではないと思いたいが、蓮はおそらく本気だ。

「名前に恥じない男になってもらわないとな」

゛己を育てる゛

そう言う意味もあったのか・・・。あの時感動した気持ちを返せ!と美咲は思ったが、蓮がちゃんと愛情を持って育己に接していることはわかっているから受け流すことができる。

これ以上盛っても、何もできないことを知っている蓮は、散々美咲を触り倒して満足すると、美咲を抱き締めて眠った。

< 123 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop