寡黙なダーリンの秘めた愛情
「退院おめでとうございます」

NICUでの12日間、育己の受持ち看護師として尽力してくれた三住ナースがお祝いの言葉をくれた。

「順調に経過して良かった。次は1ヶ月検診で会いましょう」

新生児科の主治医、山田先生も一緒に見送りをしてくれた。

三住ナースは、38歳のベテランナース。

自身も26週で長女を産み、NICUに通った経験を持つ。

美咲以上の壮絶な経験を持つ三住だったが、前向きで肝の座ったスーパーママだった。

低出生体重児を持つ親の葛藤や、予防接種等の不安な今後への疑問。

三住は不安を煽らない程度に、丁寧に自分の体験談を交えて説明、指導してくれた。

三住の長女は生まれた当時は1000gにも満たない超低出生体重児だったが、現在は高校生になっており、スポーツに勉強に青春を謳歌しているそうだ。

「どんな環境や状況下に置かれても、子供は自分の力を最大限に発揮して成長していきます。流れに抗わず、親としてそれを見守り支えていけばいいんですよ」

同じ経験をしてきた人の言葉は心に届く。

同じ経験をしなくても、同じような赤ちゃんやご両親、家族を支えてきたスタッフの経験は真実味がある。

美咲と蓮は大きく頷くと、スタッフにお礼を述べて、おくるみにくるまれてスヤスヤ眠る育己を連れて、病院を後にした。

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