寡黙なダーリンの秘めた愛情
リビングには、車椅子に乗った美咲と蓮の曾祖父である喜久蔵が待っていた。

「おかえり、蓮。美咲。ご苦労だったな」

御年100歳だった喜久蔵は、美咲の妊娠中に101歳を迎えていた。

美咲の妊娠、出産はギリギリまで知らされていなかったが、今日、玄孫に会えると知った喜久蔵の喜びは尋常ではなかった。

「おお、この子が育己か。美咲に似てとても可愛い顔をしておる」

シワシワの手で美鈴が抱く育己の頬を優しく撫でる喜久蔵。

「だっこしてあげてください」

幸いにも小さい育己の体重なら、喜久蔵の細い腕でも抱えられるだろう。

胸に抱く育己をいとおしそうに見つめる喜久蔵を見て、美咲は一年前に突然課せられた役目を果たせてよかったとしみじみ感じていた。
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