寡黙なダーリンの秘めた愛情
「直之助は、橋之介の妻となった花子さんのことが幼い頃から好きだったんだ。

だが、わしは会社を継がない直之助ではなく、会長候補の橋之介とお嬢様の花子さんを結婚させた。

直之助の落ち込みぶりを見て、ずっと悪いことをしたなと思っていてね。

いつか、直之助と橋之介に子供が生まれたらその子達を結婚させようと思っていたんだが、その代は女の子しか生まれなかった。

だが、幸いにも直之助の孫の代で男の子が生まれた。

その10年後、橋之介の孫が生まれるとの吉報を得た。

わしはそこで智恵子の元に蓮を預けることにした。

そうすれば、蓮が美咲に執着し始めることは容易に予測がついたからな」

祖父母の代からの壮大な喜久蔵の計画に、美咲は頭がくらくらした。

「どうして、予測がついたの?」

「蓮は直之助の孫だ。同じ経緯で花子さんを好きになった直之助の跡を継ぐにきまっているからな」

なんと、直之助も、花子お祖母さんがお母さんのお腹にいるときから執着を見せ恋に落ちた先輩だったらしい。

直之助の実らなかった初恋のせいで運命を狂わされた蓮と美咲と言えるかもしれないが、実際に恋に落ちたのは本人たちなのだ。

「孫なら誰でもいいというわけではなく、美咲の相手ははじめから蓮しか考えられなかったんだよ」

結果オーライ、と笑う曾祖父に美咲は苦笑するしかなかった。

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