寡黙なダーリンの秘めた愛情
それから6年が経過した。
育己を出産後、8週間で職場復帰した美咲は、在宅を中心に、研究所と自宅を行き来しながら仕事を続けてきた。
育己は名前の通り、何でも自分のことをしようとする少し大人びた男の子に成長した。
今年は小学校入学予定。
「育己、美咲の手を離しなさい」
「やだよ。父さんこそ離せよ」
29歳になった美咲は、童顔のため今でも高校生に間違われることもあるくらい若々しい。
美咲は、育己の自慢の母であり
「母さんは将来の僕のお嫁さん」
と、言われるくらい、息子に愛されている。
夫と息子が自分を取り合う、朝の出勤時の見慣れた風景に美咲は苦笑する。
「蓮くん、息子相手に本気にならないの」
育己の手を握る美咲は、優しい目で蓮を見つめた。
「いや、こいつはわかっていないようだから何度でも伝える。美咲は俺の嫁で、お前のものになることはない。だから早く運命の相手を見つけなさい。いつでも歓迎してやる」
6年経っても、蓮はぶれない。
不貞腐れて涙目の育己の頭を撫でながら、蓮は満足そうだ。
「もう、蓮くんはナナちゃんが生まれてきてもそんな態度をとるのかな?」
現在、美咲のお腹には二人目の赤ちゃんが宿っている。
7月7日に妊娠がわかったのでナナちゃん、と育己が名付けた。
8ヶ月に入り、性別も女の子だとわかっている。
「何を言ってるんだ。女の子だからって対応は変えるつもりはないぞ。生涯、美咲は俺のもの。親子の心情以外で愛するのは美咲一人だ」
仕事では、寡黙な蓮。
家族以外には素っ気ない蓮。
だけど、美咲だけに向けられる愛情はずっと同じボルテージを保ったまま。
「いってきます。育己、美咲、事故には十分気を付けるんだぞ」
育己の手を握った反対の手で、美咲は蓮の手を取る。
満面の笑顔を見せる夫こそ、美咲だけのものだ。
晴れ渡る冬の空を見上げながら、変わらぬ日常を感謝して、今日も美咲は幸せをかみしめるのだった。
おしまい
育己を出産後、8週間で職場復帰した美咲は、在宅を中心に、研究所と自宅を行き来しながら仕事を続けてきた。
育己は名前の通り、何でも自分のことをしようとする少し大人びた男の子に成長した。
今年は小学校入学予定。
「育己、美咲の手を離しなさい」
「やだよ。父さんこそ離せよ」
29歳になった美咲は、童顔のため今でも高校生に間違われることもあるくらい若々しい。
美咲は、育己の自慢の母であり
「母さんは将来の僕のお嫁さん」
と、言われるくらい、息子に愛されている。
夫と息子が自分を取り合う、朝の出勤時の見慣れた風景に美咲は苦笑する。
「蓮くん、息子相手に本気にならないの」
育己の手を握る美咲は、優しい目で蓮を見つめた。
「いや、こいつはわかっていないようだから何度でも伝える。美咲は俺の嫁で、お前のものになることはない。だから早く運命の相手を見つけなさい。いつでも歓迎してやる」
6年経っても、蓮はぶれない。
不貞腐れて涙目の育己の頭を撫でながら、蓮は満足そうだ。
「もう、蓮くんはナナちゃんが生まれてきてもそんな態度をとるのかな?」
現在、美咲のお腹には二人目の赤ちゃんが宿っている。
7月7日に妊娠がわかったのでナナちゃん、と育己が名付けた。
8ヶ月に入り、性別も女の子だとわかっている。
「何を言ってるんだ。女の子だからって対応は変えるつもりはないぞ。生涯、美咲は俺のもの。親子の心情以外で愛するのは美咲一人だ」
仕事では、寡黙な蓮。
家族以外には素っ気ない蓮。
だけど、美咲だけに向けられる愛情はずっと同じボルテージを保ったまま。
「いってきます。育己、美咲、事故には十分気を付けるんだぞ」
育己の手を握った反対の手で、美咲は蓮の手を取る。
満面の笑顔を見せる夫こそ、美咲だけのものだ。
晴れ渡る冬の空を見上げながら、変わらぬ日常を感謝して、今日も美咲は幸せをかみしめるのだった。
おしまい