寡黙なダーリンの秘めた愛情
「美咲...子供じゃないなら俺を慰めてくれないか」

そう言って、美咲の胸に顔を埋める蓮に美咲は戸惑いを覚えるが、いい感じにお酒がまわって冷静な判断ができなくなってきていた。

甘いストロベリーのカクテルは、ジュースのように飲みやすく、蓮に薦められるがままに飲んでいた美咲の頭はフワフワしていた。

何せ初めて飲んだお酒である。

自分の限界を美咲は知らない。

「蓮くん、悲しいの?」

抱き締めている蓮の頭を、ゆっくりと励ますようになで続ける美咲。

「ああ、悲しいよ。好きな女に一方的に離れていかれて、一緒に祝おうと約束していた記念日すらないがしろにされて...」

美咲の頭の中には、あの美しい大人の女性、由利亜が浮かんでいた。

゛ああ、蓮と由利亜の間で何かがあったんだ゛

お酒でぼんやりしながらも、美咲の胸には抗い難い嫉妬の炎が再燃し始めていた。

「ひどいね。それでも好きなの?」

「ああ、堪らなく好きだ」

寡黙な蓮の本気の告白。

美咲の目には涙が浮かんでいたが、胸に抱く蓮にはその表情は見えない。

「私なら、蓮くんを泣かせたりしないのに...」

思わずこぼれた本音に、蓮が顔をあげて美咲を見た。

「俺を受け入れてくれるの?」

「蓮くんが望むなら...」

お酒は普段の美咲の理性を奪い、本能だけを剥き出しにした。

「美咲の初めてが欲しい。俺が必要とされてるって安心したいんだ」

゛安心したい゛

自分が蓮を慰められるのなら、蓮が自分を欲してくれるのなら、美咲は今だけでも彼を慰めて支えてあげたいと思った。

理性の箍(たが)が外されて残ったのは、゛蓮が欲しい゛という純粋な欲望だけ。

蓮を傷つける由利亜のことなんて、この際どうでもよい。

蓮が満たされるのならそれでいい。

美咲は目を閉じると、蓮の口づけを受け入れた。
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