寡黙なダーリンの秘めた愛情

「で、誰が妹で、誰がヤンデレだって？」

20歳の誕生日に思いを馳せていた美咲は、蓮に頭を小突かれて思考を戻した。

「ジムとホイットニーが、蓮くんから私を守るために放たれた騎士だったと聞いたの。蓮くんたら妹の私にそこまでするなんてヤンデレよ！」

ブッと笑うジムとホイットニー。

ここは、美咲の20歳の誕生日に蓮が酔いつぶれた思い出のバーラウンジ。

もう二度と来ることはないと思っていたのに運命とはかくも残酷である。

「蓮がヤンデレなのは今に始まったことじゃないさ。気づくのが遅すぎるだろ。美咲は」

「欲しいものは全て手に入れるのが俺様の主義だからな」

「おー怖い」

ジムと蓮の会話に美咲は苦笑する。

「あのとき欲しかったものは手に入ったの？」

「ああ、色々あったけど、形はどうあれ最終的には受け入れてもらって俺は満足だよ」

゛由利亜も美咲には攻撃的な態度をとるものの、この状況を受け入れているということか．．．゛

俯いて自嘲ぎみに笑う美咲を見て、心配そうにホイットニーが言った。

「何か、あなた達、噛み合っているようでどこかすれ違っているように見えるけど大丈夫なの？」

「大丈夫。私は全て納得の上だから。蓮くんの決めたことに従うだけ．．．」

「従うって何よ？これからは何事も二人で話し合って決めるべきでしょ？蓮、あんた、しっかり美咲に本音を話しているの？」

ムキになるホイットニーに驚いて、蓮が固まる。

「なかなか言葉にできないが、美咲には伝わっていると思っている」

「馬鹿、蓮！言葉にしなければ伝わらないし、態度で推測しろなんて、日本人には美徳でも、よその国では厄介な習慣でしかないのよ。後悔しても遅いんだからね」

「まあ、まあ、結果的に収まるところに収まったんだからいいだろ。いくらなんでも、お嫁さんになった美咲を貶める猛者は日本にもいないさ」

゛貶めたのは私だけどね゛

そんなことを考えている美咲を怪訝そうに見つめていたのは、勘のいいホイットニーだけで、男二人は美咲と蓮の結婚を手放しに喜んでいるだけだった。