寡黙なダーリンの秘めた愛情
「ねえ、美咲、今日は萌を誘って飲みに行かない?私、築地のお寿司が食べたいわ」

「いいわよ。でも、ジムと蓮くんの許可を取ってね」

結婚して三ヶ月が経った。

今のところ、新婚生活は穏やかに過ぎ、目立った問題もなく日々を重ねていた。

いつものように八雲メディカルが取り扱う医療機器のテストをしていた美咲とホイットニーは、今晩の食事のことで話を咲かせていた。

「お寿司ねえ...」

゛なまものかぁ゛

と、美咲が考えているとムカムカと胃から何かが込み上げてくる。

「ちょっとゴメンね」

美咲は慌ててトイレに駆け込むと、便座をあげてトイレに顔を近づけた。

しかし、胃液以外に出てくるものはなく、更にはトイレの臭いにすら吐き気が呼び起こされるという悪循環に陥った。

ようやく吐き気がおさまり、美咲が研究室に戻ったのは15分が経過した後だった。

「美咲、どうしたの?顔色が真っ青よ。病院に行く?」

美咲は笑顔を浮かべて首を振るが、その表情に覇気はない。

「これじゃあ、今日のディナーは無理ね。とにかく病院に行きなさい。お腹の風邪かもしれないから」

大丈夫だと言い張る美咲をホイットニーは許してくれない。

「ジムは今日、英会話教室はお休みなの。ジムに迎えに来てもらうから、すぐに病院に行くこと」

アメリカにいたときも過保護だったホイットニーとジム。

本当は蓮の兄妹なのではないかと思えるほど、三人は似ていて過保護だ。

美咲はこれ以上の抵抗はあきらめて大人しく病院に行くことにした。
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