寡黙なダーリンの秘めた愛情
「蓮くん」

美咲はストロベリータルトから蓮に視線を移した。

そこには、無表情だが高校のブレザーを素敵に着こなした、大人な高校生の蓮がいる。

同じ年の従姉妹が

『蓮くんてアイドルグループの翔くんに似てるよね』

と言っていたが、マジマジと見ると確かに格好いいかもしれない。

おしゃまな従姉妹とは違い、まだまだ幼い美咲は、異性への恋心など持ち合わせてはいなかった。

じぃっと見つめる美咲に、なぜか蓮は一瞬顔を反らしたが、コホンと一回咳をすると美咲に向き合い

「全部食べそうな勢いだな」

と、優しく笑った。

「半分、ううん、全部食べられるよ!」

そう言って満面の笑みを浮かべる美咲に、蓮の頬が少し赤くなった気がしたがそれも一瞬だった。

「欲張りだな、美咲は」

クシャクシャっと美咲の頭を撫でる蓮の大きな手は父親よりも大きくて温かかった。

「でもこっちが先だ。きっと美咲も気に入ると思う」

と、美咲の小さな両手に手渡されたのは白い紙の箱。

「なんだろう?でもケーキ・・・」

「いいから、開けてみな」

美咲はテーブルの上のストロベリータルトが気になりながらも、渋々といった体で箱を開けた。

「わぁ!」

その中には、キラキラ光るジュエリーのように輝く手のひらサイズのストロベリータルトが4個。

「誕生日おめでとう。さ、食べろ。大きい方は家に持って帰って食べればいい」

「蓮くん、大好き!」

美咲は蓮に抱きついて御礼を言うと、すぐにストロベリータルトを口一杯に頬張った。

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