寡黙なダーリンの秘めた愛情
「どうだった?何か悪い病気だった?」

コップを手にしたまま診察室を出てきた美咲に、心配そうに尋ねるジム。

「先に検尿だって」

「ケンニョウ?」

「urine specimen」

「wow、オシッコの検査ね!」

大声で叫ぶ外国人男性に注目が集まる。

「ジム...」

「sorry」

ちっとも悪いと思っていないであろうジムを残し、不安と共に美咲はトイレへ向かった。

「色はいつもより濃いとは思うけど...」

勢いで結婚した美咲には、全くといっていいほど妊娠の知識はない。

子供はいずれできるだろうと思ってはいたけれど、周りには不妊に悩むスタッフも多かったし、自身も生理不順だったためそんなに簡単に子供ができるものではないと思ってもいた。

「ドラマで見たようなベタな展開が自分に当てはまるとは...」

目の前に妊娠の可能性を突きつけられても、美咲はまだ、その可能性を信じられずにいた。

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