寡黙なダーリンの秘めた愛情
「美咲、産婦人科ってことはオメデタ?」

「可能性ってだけで、まだ正常妊娠かはわからないって」

「セイジョウニンシン?」

「うーん、日本語での説明は難しいな」

美咲がわかる範囲内の英語で説明をすると、

「そっか、エコーをするまで安心できないってことだね。妊娠は奥が深い」

と、珍しく真顔で呟いた。

産婦人科の前の待合室でジムと順番を待っていると、

「国際結婚?きっと赤ちゃんは可愛いでしょうね」

と婦人科診察待ちらしきおばさんが話しかけてきた。

さっきの内科医の反応をみて、下手に真実を告げるのは面倒くさいと思っていた美咲は曖昧に笑ってごまかすことにした。

「ご主人は何人(なにじん)?出身は?」

迷惑そうにしていることにも気付かず話しかけてくる女性に辟易していると

「この男は彼女の夫ではありません。僕の妻です」

と、背中側から美咲を抱き締める男の声が聞こえてきた。

「蓮くん...」

「あらまあ、浮気現場に夫が登場とか?修羅場ねえ」

気品の欠片もない女性の一言に

「名誉毀損で訴えても?」

と蓮がいい放った。

「いやねえ、冗談も通じないのかしら」

そそくさとその場を去った女性の態度を見て、慌てて謝罪に来たクラークによると、暇をもて余して外来患者に難癖をつけて回ることで有名なおばさんらしかった。

なんとも暇人がいたものである。

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