寡黙なダーリンの秘めた愛情
「エコーでの計測結果からいうと、妊娠11週目ですね。3ヶ月の4週目になります。身長は約9cm、体重は20gといったところでしょうか。ほら、心臓も動いていますよ。正常妊娠ですね。おめでとうございます」

砕石位と呼ばれる開脚した姿勢をとらされる内診台の上に乗せられた美咲は、経膣プローベという機械を股に入れられ、赤ちゃんを観察されていた。

くしくも、この診察台もエコーも八雲メディカルコーポレーションが納品したのだと、蓮がいらぬ情報をくれたので少し緊張が解れた。

「これが美咲と俺の赤ちゃん?」

「そうですよ。可愛いですね」

どう見ても可愛いとは言い難い容貌なのだが、自分の子供は特別らしく、蓮はうっすらと目に涙を浮かべて感動しているようだ。

「つわりはない人もいますが、これからしばらくは続くと予測されます。まだ胎盤は完成してませんので、余り無理はなさらないようにしてくださいね」

女医の話を聞いて、蓮の顔が青くなる。

「えっと、毎日、妻とそういう行為をしてきたのですがこの子に影響はなかったでしょうか?」

蓮の正直な申し出と質問に、美咲の方が真っ赤になる。

「感染症を持っている方との行為なら流産や早産を誘発する事もありますが、性行為自体でそれらが誘発されることはないとする見解が大多数です。でも、無理は禁物ですよ。奥さんと話し合いながら、体調をみながらしてくださいね」

さすが産婦人科医だ。

男性からの質問にも怯むことなく笑顔で答えている。

なるほど、と納得しながら質問を重ねる蓮もやはりただ者ではない。

美咲は先程まで抱えていた不安が薄れていくのを感じていた。

当てられたエコーの向こうに見えた心臓が動いている様子。

美咲と蓮の赤ちゃん。

二人の愛の結晶とは呼べなくても、かけがえのない大切な命だ。

「べべちゃん」

思わず呟いたニックネームに

「可愛い胎児名ですね。きっと赤ちゃんも喜んでますよ」

笑顔の女医が素早く反応してくれた。

bebeとはフランス語と英語で赤ちゃんを意味する通称だ。

アメリカではスラングで゛かわいこちゃん゛という意味もあるが、それもありだと思う。

「ベベか。よろしくな」

蓮は女医からもらった超音波写真にチュッとキスをした。

普段はそんなことをしそうもない寡黙なイケメンのギャップ萌えに、美咲は赤面したまま内診台に乗っていた。

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