寡黙なダーリンの秘めた愛情
「妊娠3ヶ月か。受精の時点で2週目なんだろう?逆算するとあのときか」

「やめて、蓮くん。リアルな回想しないで」

「いや、将来ベベに聞かれたときに話して聞かせることができるようにしっかり記憶と記録をしておくんだ」

「そこは聞きたくないと思うんだけど」

「どうして?」

どこの子供が、自分が仕込まれた様子を事細かに知りたいと思うのか?

学校でも親に聞いてこいと言うのは、名前の由来とか、生まれてきたときの様子だけだろう。

美咲だって、両親のそういう行為を想像したくはない。

「そうだな、たとえ子供でも、俺と美咲の二人だけの甘い時間を共有したくはない」

゛なんなのこの人?゛

まあ、喜んでくれているのだから、多少の奇行は黙認しようと美咲は覚悟を決めた。

「あ、でも蓮くん、この事はまだ内々にしておいて。せめて安定期に入る5ヶ月までは黙っておきたい。ジムとホイットニー、萌、美鈴ちゃんには知らせようと思うけど」

「そうだな。社内で何かあったときの味方は必要だ。ビックリして心臓が止まったら困るから、ひいじいさんには出産直前に知らせよう」

そこは何とか意見が一致して良かった。

だが、まだ美咲の不安の種は消えない。

美咲の妊娠を知った由利亜がどう思うか...。

そしてその事をどうやって蓮が彼女に伝えるのか。

明日からの職場での日々への不安が、美咲の心に重くのし掛かるのだった。
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