寡黙なダーリンの秘めた愛情
「母子手帳を取りに行こう」

「母子手帳?」

「ああ、さっき助産師さんから聞かされたんだ。産婦人科の先生からもらった妊娠届出書と美咲の個人番号通知書および身分証明書を持っていけば即日発行されるらしい」

自分の感情を表す必要のない部分では、蓮は多弁になる。

「そ、そう。でも、蓮くんは忙しいんじゃ...」

「いや、美咲やベベのこと以上に大切なことなんてない。うっかりしてたら、さっきは危うくジムに美咲の産婦人科受診という初体験に付き添う権利を奪われるとこだったんだぞ」

゛はい、この人は誰ですか?゛

結婚してからの蓮はどこかおかしい。

ジムやホイットニーが言うように、昔からヤンデレ気質があったのかもしれない。

゛結婚して隠す必要がなくなったから垂れ流すことにしたの?゛

「別に産婦人科が初めてというわけでは...」

「何?どういうことだ」

ジリジリと蓮が美咲に詰め寄ってくる。

「いや、ストレスで生理が半年止まって、生理不順でアメリカの病院にかかったから」

「ああ、その事か。それなら報告を受けてるからいい」

今、何か不穏な言動が聞こえたような...。

最近、美咲は秘技゛聞き流す゛を覚えたばかりだ。

突っ込んだら負けな気がする。

「もう行こうよ、蓮くん」

美咲は満面の笑みを浮かべて蓮の左腕に自分の右腕を絡ませた。

そうすれば、蓮の機嫌はMAXに上がることを美咲は知っているから。


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