寡黙なダーリンの秘めた愛情
「いやん、美咲ちゃん、赤ちゃんができたのね。結婚もしてないのに私もとうとう叔母さんになるのね。嬉しいような、悲しいような」

母子手帳を受け取った後、蓮は会社に戻っていった。

続けて入っていた会議をすっぽかした反動で、蓮の今日の残業は決定らしい。

「心配だから、美鈴でも呼んで一緒に留守番させろ」

そんな蓮の一言で、その日の18時には、蓮と美咲の住むマンションには、萌、美鈴、ホイットニー、ジムが顔を揃えていた。

「セイジョウニンシンと聞いて安心したよ。ホイットニーとランチで合流してすぐにネットでいろいろ調べたけど、イショセイニンシンて怖いんだな。卵管で着床すると、破裂してbabyだけでなく母体の命も危うくなるとか」

ペラペラと捲し立てるジムは、この短時間で色々調べたようだ。

なぜか、ジムは聞きなれない日本語の熟語(正常妊娠も異所性妊娠も熟語ではない)がでると調べなくては気がすまない性分のようで。

...なるほど、蓮と気が合うわけだ。

「そんな、美咲を怖がらせることを言わないで。今日はお祝いを言いに来たんだから」

すっかりジムとホイットニー、美鈴と仲良くなった美咲の親友で同期の萌が、ジムを諭す。

「sorry、萌。僕だって嬉しいんだ。親友の蓮と妹みたいな美咲に天使がやって来て」

クリスチャンのジムは胸の前で十字を切ると、神に感謝の祈りを捧げた。

「それよりも、今日、蓮のお使いで研究室に来た女は誰なの?とても感じ悪かったんだけど」

ホイットニーの言葉に、美咲の顔が固まる。

「え、お使いって何?なんのこと?」

「アカイケ、ユリア、重役秘書とかいうケバい感じの」

萌の問いに、ホイットニーが答える。

「ああ、赤池さんね。自称、蓮さんの元カノ」

「自称?」

驚いて叫んだ美咲に、逆に驚いたように萌が美咲を見る。

「総務や秘書課では有名な話だよ。未だにベタベタ付け狙ってるって」

゛誤解じゃないのに゛

俯く美咲に、勘のいいホイットニーが

「ははん、美咲、そいつに何か言われてずっと勘違いしてるんでしょ?まさか、そいつと蓮が付き合ってるとでも?」

「ハハ、ないない。それだけはないよ。兄さんは昔から美咲ちゃん一筋だからね。しかも変態レベルで」

妹の美鈴に言われても、美咲はその言葉を信じられずにいる。

「でも、私見たの。二人が抱き合ってるところを」

「いつ?」

「高校3年生のとき。会社の駐車場で」

「Oh.dear...(なんてこったい)」

美咲以外の四人のため息が一斉に部屋にこだました。
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