寡黙なダーリンの秘めた愛情
6週間後の17週目。美咲は妊娠5ヶ月になった。

その月の一番早い戌の日に、美咲は蓮と、何故かホイットニーとジムも一緒に、近くの水天宮へ゛帯祝゛のために訪れていた。

実家からもらった岩田帯を持ち、初穂料を支払って安産のための祈祷を受けて、お守りをもらう。

安産の子沢山と言われる犬にあやかって、5ヶ月の最初の戌の日に行われる日本ならではの儀式だ。

今はマジックテープ式の腹帯を持ってくる妊婦が多いが、美咲はせっかくだからと、岩田帯を選んだ。

祈祷が終わって、お焚き上げを終えた帯とお守りを手にすると、蓮も美咲も感慨ひとしおになった。

日本の伝統文化に触れて、ホイットニーもジムも満足そう。

「カシコミカシコミ・・・」

ジムは祝詞をことのほかお気に召したようで二人して代表的な祝詞をスマホで調べたりしている。

美咲の下腹は少し出てはきているものの、悪阻で食欲のない日が続き、パッと見は妊婦だと認識されないことが多い。

ホイットニーと萌、美鈴の協力も得ており、今のところ美咲の妊娠は身内以外には公表してもいないため、由利亜とその取り巻きからの直接攻撃は受けていない。

だが、これからお腹が目立ってくれば、いつまでも隠し通すことはできないだろう。

蓮と美咲に子供ができてしまえば、さすがの由利亜でも諦めるだろうと楽観視したいが、相手は思い込みの激しいメンヘラ気味の女だ。

いや、ある意味、蓮との交際への思い込みは、非常にポジティブな思考をこじらせているので、メンヘラとも言えないが...。

「とにかく、ようやく安定期だね。安定期といえども゛ユダンキンモツ゛だよ」

「いや、ジム、それを言うなら゛油断大敵゛でしょ」

ジムと話していると、どこかの外国人漫才師と話している様な気がしてきて笑える。

悪阻や体の急激な変化は辛かったけど、ここのところずっと優しい旦那様と友人に囲まれて、美咲は幸せだった。
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