寡黙なダーリンの秘めた愛情
「ホイットニー、M州立大学の教授から電話が入ってるぞ。城之内部長が行っている京都の循環器学会に来ているそうだ」

「ええ、知ってるわ。ジェームス教授ね」

研究室室長である長友章一郎35歳が、ホイットニーに外線電話をつないだ。

「What's? Are you kidding?(はあ?何言ってんの?)」

ホイットニーの怒号が響く。

「どうしたの?ホイットニー?」

美咲の問いかけに、ホイットニーが顔をしかめる。

「ジェームスが私の来日前に私に渡したUSBのデータが欲しいらしいの。自分の分のUSBは、さっきトイレに落としてデータがぶっ飛んだらしくて、助手を品川まで行かせるから届けて欲しいっていうの。夕方のシンポジウムで使うんだって」

ジェームスは美咲も世話になっている教授だ。かなりのドジで、散々迷惑をかけられた思い出があるが、彼は天才だ。

研究以外が残念なのはある意味仕方あるまい。

「行ってあげてよ。私なら大丈夫だから」

「でも、今日は美鈴も萌も研修で横浜に行ってるし美咲を頼める人がいないわ」

「大丈夫よ。ここには知らない人はいないし、一歩も出ないようにするから」

かなり渋っていたホイットニーも、最後には承諾して品川に向かうことにした。

「いい?何かあったらすぐに連絡してよ。一時間で戻るから」

そう言って、ホイットニーは足早に研究室を後にして行った。
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