寡黙なダーリンの秘めた愛情
「城之内さんはいるかな?」

ホイットニーが研究室を出ていった15分後、珍しい人物が研究室に現れた。

八雲メディカルコーポレーションの取締役専務である八雲政義52歳だ。

政義は八雲喜久蔵の孫の1人で、息子が3人いる。

長男の義一27歳は、八雲メディカルの営業部主任。

次男、義次25歳は八雲メディカルのライバル会社であるT光電に勤めている。

言わば、美咲にとっても親戚筋にあたる。

「八雲専務、ご無沙汰しております」

美咲は椅子から立ち上がると、丁寧にお辞儀をした。

「何か研究室に御用ですか?専務がわざわざ顔を出すなんて珍しいですね」

美咲がお茶を出そうと歩き出すのを政義が止めた。

「いや、ちょっと美咲ちゃんに個人的に話したいことがあってね。長友主任、少し彼女を借りてもいいかな?」

「ええ、今はホイットニーも不在でカンファレンスも出来ませんから大丈夫ですよ」

政義の問いに、長友主任が奥の会議室の使用を進めた。

ここは遮音性に優れ、開発中の医療機器の話をする時などに使用される特別な場所だ。

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