寡黙なダーリンの秘めた愛情
「まずは、女性関係。君は赤池由利亜さんと彼の関係を知っているかい?」

「...城之内部長は関係を否定してくれました。彼の妹の美鈴さんも、総務にいる私の親友も色々と証言してくれましたし」

「だが、嘘だという証拠もないだろう?現に今も赤池さんは普通に社内で働いているし、今日だって、蓮くんの学会に付いていっている」

「学会に...ですか?」

「ああ、同じホテルをとっていると聞いているよ。十中八九同じ部屋に泊まるだろうね。先日も、二人がホテルから出てくるのを目撃した。これが証拠の写真だ」

政義が差し出した写真には、今年11月20日の日付。

由利亜の腰に腕を回す男性は、後ろ姿だが蓮のように見える。

「他にもあるぞ。6年前からの分だ。見るといい」

そこには、由利亜と蓮が抱き合う姿や、バーでキスをしているような写真もある。

蓮を信じたい美咲は、真っ青になりながら目の前の現実を受け止めきれないでいた。

「信じたくなくないのもわかる。だが、これが動かぬ証拠だ。赤池さんのお腹には蓮くんの子供が宿っている」

見せられた最後の写真には、由利亜と蓮が連れだって個人の産婦人科に入っていく様子が写されていた。

「蓮くんの口から...聞かなければ信じません」

涙目の美咲を宥めるように政義が話を続けた。

「それだけじゃない。蓮くんは八雲メディカルの機密データを東京光電に横流ししている。その上、経費の横領にまで手を染めているんだ」

政義は、蓮のパソコンIDから送られた東京光電へのメールやデータを紙ベースで提示した。

続いて、会計監査で指摘された巧みに計算された横領の証拠も...。

「八雲専務は、こんなことを私に知らせてどうしたいのですか?」

美咲が唇を噛んで見上げると、政義が真剣な顔をして

「もちろん、城之内副会長と蓮くんの解任だよ。それにあんな不誠実な男とは君を別れさせたい」

と言った。
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