寡黙なダーリンの秘めた愛情
見かけによらずその段ボールは重かった。

中には医療機器の部品か何かが入っているのだろうか?

妊婦の美咲が持つには腰への負担が大きかった。

ゆっくりと歩き出した美咲は、エレベーターを待っていたが、エレベーターは10階を示したまま、一向に降りてくる気配がない。

そのうち点検中のマークがついてしまった。

別棟にある研究室に行くにはこのエレベーター一機しかない。

幸い、研究室は2階だからと、美咲は階段を利用することにした。

ボンヤリと階段を上っていたのが良くなかった。

段ボールで足元が良く見えていなかったのもあり、3段を上ったところで、美咲は爪づいて腰部を打撲してしまった。

手にしていた段ボールがお腹に当たって落ちていく。

腹部と腰部に激痛が走った。

股の間にジワジワと何かが滲み出るような、生理に似た感触。

「や、やだ。べべちゃん...」

段ボールは投げ出され、床に落ちている。

美咲は階段に横たわるようにしてお腹を支え、涙を流しながら気を失っていた。
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