寡黙なダーリンの秘めた愛情
「...美咲、美咲!」

呼び掛ける声に、美咲が目を開けるとそこには真っ白な天井が見えた。

「良かった。目を覚ましたのね?研究室にいないから探しにいったら、階段で倒れていて本当に驚いたんだから...。もう、心配させないで!」

横たわる美咲に抱きつくホイットニーも泣いている。

「そうだよ。倒れたって聞いて、僕も授業をほったらかして飛んできたよ」

肩を竦めて苦笑するジムも顔がやつれている。

本当に心配してくれたようだ。

微笑みを浮かべようとした美咲は、ふと重要なことを思い出す。

「わ、わたし、階段で爪づいて腰を打ったの。べべちゃんは...!」

「美咲、良く聞いて。今、美咲は切迫早産という状態らしいの。子宮が収縮してるらしくて張り止めで様子を見るらしいわ。でも落ち着くまでは入院よ」

切迫早産...?

お産が差し迫った状態。

まさか、自分がそんな状態に陥るとは思ってもいなかったので、決して真剣には読んでいなかったが、お産関連雑誌を見て断片的にはその知識はあった。

良く見ると、美咲の左手には点滴が留置され、栄養剤と思われる点滴の横に、ウテメリンと書かれた張り止めの点滴が流されていた。

「目が覚めたから、蓮と美鈴に連絡を...」

「お願い!連絡は...しないで...」

美咲の悲痛な叫びに、やはり何かあったのだとホイットニーもジムも悟る。

「大事な学会と、研修なの。二人に心配かけたくない」

美咲の言葉に、ホイットニーとジムは顔を見合わせた。

「今からドクターが説明に来るわ。その後、じっくり話を聞かせて」

アメリカ留学中、二人はまるで親や兄姉のように美咲を支えてくれた。

美咲は泣きながら頷くと、しばらくやすみなさいというホイットニーの言葉に頷いて再び目を閉じた。

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