寡黙なダーリンの秘めた愛情
「とにかく、ここ数日は外傷による影響がないか様子を見るために安静にしてください。2日くらい様子を見て問題ないなら歩行を開始して、子宮の状態をみながら内服薬に切り替えていきましょう」

山中先生は、美咲のお腹につけられた胎児心拍モニターをみながら

「赤ちゃんは元気ですよ。但し、胎動が感じられなくなったらすぐに教えて下さい。せめて28週まではお腹にいないと、赤ちゃんはまだ肺が出来上がってはいないので呼吸器をつける可能性が高いです。一日でも長くお腹で育てていきましょうね」

そう言って助産師と共に部屋を出ていった。

後5週もあると思うと気が重くなってきたが頑張るしかない。

自分の不注意で招いたことだ。

美咲は元気な心音を響かせる胎児心拍モニターを見てため息をついた。

胎児心拍モニターについては、美咲も大学で習ったことはあったが、研究専門外なのであまり掘り下げることはなかった。

べべの心音を聞きながら、その規則性と子宮の張りを示す波形に一喜一憂しそうになる。

「胎児心拍モニターね。実習では触ったことがあったけど、こうして美咲に使用されてるのを見るとなんだか不思議ね」

とホイットニーが呟いた。

「とにかく、ドクターとミッドワイフ(助産師)の言うことを良く聞いて、安静にしてること。おみくじの神様が言ってたのはこの事だろうけど、後は末広がりでしょう?待ち人来るんだからドンとかまえて!美咲の巻いてた腹帯がきっと二人を守ってくれたのね」

ホイットニーのポジティブな捉え方に、美咲も励まされた。

「フコウチュウノサイワイだね」

ジムの言葉に、ゆっくりと美咲も頷いた。

しかし、政義と松本の言葉が気にかかる。

とても信じがたくてショックな話だった。

それをこれからこの二人に話さなければならない。

美咲は意を決して口を開いた。

「ジム、ホイットニー、聞いて欲しいの...」

胎児心拍モニターのべべの心音が早くなった気がした。


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