寡黙なダーリンの秘めた愛情
ジムもホイットニーも、美咲のことが心配な余り蓮に連絡することを失認していた。

だが、入院になったとはいえ、現状は点滴をして安静にしているしかない。

美咲にしてあげられることは、側にいて励ましてあげることだろう。

しかし、蓮は学会先で大切な役割を果たさなければならないから、美咲の側にいてやることはできない。

ならば、心配事は、蓮の仕事が一段落ついた夜に知らせた方が良いのではないかとの結論に3人は達した。

だが、研究棟に救急車が来たのだから、警備員やスタッフから蓮に連絡がいったかもしれない。

恐る恐る、スマホのSNSを開く美咲。

゛美咲、変わりはないか?゛
゛美咲、仕事中か?手が空いたら連絡してくれ゛
゛美咲、ホイットニーも連絡とれないが、何かあったのか?゛
゛美咲・・・゛
゛美咲?゛
゛美咲~何があったんだ!゛

以下省略。

10分おきのメッセージは、ゆうに100件を越えている。

「わ、こっちもすごいことになってる」

「こっちもだ」

ホイットニーとジムのスマホも大荒れのようだ。

政義は、由利亜も蓮と共に学会に参加していると言っていた。

由利亜と一緒にいるのに、こんなに頻回にメッセージを送ることができるもなのか?と美咲は思いながらも、

゛連絡が遅くなってごめんなさい。仕事が立て込んでいました。また夜に連絡します゛

と、蓮にメッセージを送った。

ホイットニーとジムにも、口裏を合わせる内容を送信してもらえるようにお願いをした。

゛了解゛

蓮のあっさりとした返信を見ると、どうやら、美咲の救急搬送の件は、蓮の耳には入っていないらしい。

まずはひと安心だ。

「じゃあ、僕はホイットニーを八雲メディカルに送っていくよ」

「私は社に戻って、萌と連絡を取ってみる。美咲、人工心肺のことは気にしないで。大方、改善点は出し尽くしたから、後は返答を待つだけだしね。ここは特室で面会制限をかけてるから安心して。看護師にも重々お願いしておいたから」

立ち去るホイットニーとジムを見送って、美咲は再度、目を閉じた。

室内に響く胎児心拍が、生きている喜びを伝えてくれるようで、美咲は一人ではないと思えた。
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