寡黙なダーリンの秘めた愛情

蓮とミサキ

「蓮、そんなに心配しなくても美咲ちゃんなら大丈夫だろう」

スマホを握りしめてメッセージを送信しては返信を待ちソワソワしている息子に、誠也は笑いを隠せずにいた。

仕事でも実家でも、いつも淡々としていてほとんど無駄口をたたかない蓮は、昔から美咲のこととなると多弁になり落ち着かなくなる。

端から見ていたら、蓮が美咲を妹以上に大事にしていることは明らかだったが、当の美咲には全く伝わっておらず、わが息子ながら哀れだと思っていたものだ。

実際、美咲が急にアメリカ行きを決めたときの落ち込み様は凄かった。

食事量は減り、表情に覇気はなく、仕事中もぼんやりして何も手につかなくなる始末。

しかし、裏で手を回したのか、アメリカでの美咲の生活を監視することに成功し、情報をつぶさにゲット。

更には、刺客を使って美咲に近づく輩まで排除するようになってからは、ずいぶん元気を取り戻していた。

そして美咲の20歳の誕生日の数日前。

゛美咲から連絡がない゛

と史上最高の落ち込みを見せていた蓮だったが、渡米した際、遂に美咲への思いが通じたのか、これまた史上最高の浮かれぶりで、単身帰国後は、一人思うままに美咲との結婚に向けて画策し始めた。

その2年後、美咲が日本に帰国して、二人は同じ部署で働くようになったが、蓮の思い入れとは裏腹に、2人の仲は実は余り進展していないのではないか、と思えるほどに他人行儀だった。

しかし1年後には、周囲の心配をよそに、蓮は無事に会長と美咲を丸め込み?思い通りに美咲との結婚を決めた。

3か月後には100歳の喜久蔵じいさん待望の玄孫を美咲に孕ませ、

゛我が息子ながらヤンデレの恐ろしい男だな゛と、誠也は感心・・・というか恐怖心すら覚えたものだ。

しかし、あくまでも美咲の事を最優先に考えて事を進める蓮は、ヤンデレ界の中では、比較的まともなほうだと誠也が知るのは、この後すぐのことだった。
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