寡黙なダーリンの秘めた愛情
しかし、その後、蓮は夜中にトイレに起きた際、智恵子と慎太郎がリビングで話しているのを見てしまった。

「あなた、どうしよう。張りがおさまらなかったら、ミサキに何かあったら・・・」

泣いている智恵子を見て、初めて蓮は事の重大性を理解した。

妹の美鈴が生まれる時、母親の妊娠にもお産にも何ら問題はなかった。

赤ん坊は誰もが何の問題もなくスムーズに生まれ、育つのだと10歳の蓮は思っていたのだ。

超音波の写真でしか見たことのないミサキ。

お腹の皮膚越しに、言葉と胎動でしか会話したことのないミサキ。

泣きじゃくる智恵子を見たのもそれが初めてのことでショックはことのほか大きかった。

それからの蓮は、甲斐甲斐しく智恵子を労い、積極的にお手伝いをして、智恵子を励まし続けた。

くしくも蓮は小学校の春休み期間中。

十分に智恵子を手伝う時間を持てたのである。

その甲斐があって、智恵子はお腹の張りと向き合いながら、4月12日、37週で無事に2500gの少し小さめの女児、美咲を出産した。
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