寡黙なダーリンの秘めた愛情
「二人とも、萌ちゃんと研究室の長友主任がお付き合いしていることは知っているわよね?」

誠也と蓮の宿泊するホテルは、いつでも会議等をしやすいようにツーベッドルーム付きスイートを予約していた。

幸い、ベッドは4つあるので、突然やって来た美鈴の宿泊にも対応できる。

美鈴の問いに頷く二人に

「今日、M州立大学の教授から急な用事を申し付けられて、ホイットニーが美咲の側を離れたの。やむを得ない事情だったからそこは勘弁してあげてね」

と念を押すような言い方で美鈴が諭した。

「ああ、分かってる」

と、蓮は答えるが、表情は納得していない。

「ホイットニーが出掛けた15分後に、八雲の政義おじさま・・・、取締役専務が研究室に来たらしいわ」

「八雲専務が?」

これには、連だけでなく、誠也も怪訝な顔をした。

「不信な人物が来たときのために、美咲とホイットニー、長友主任しか使わない部屋に、盗聴機を仕掛けておいたのよ。長友主任は、美咲ちゃんと八雲専務をそこに案内した」

八雲専務が去ったあと、盗聴した内容を確認した長友主任は、研修に出ていた美鈴にすぐさま連絡をくれた。

そして、研修参加を取り止め、会社に戻った美鈴が確認した内容は、政義が語る、蓮と由利亜の不貞と、蓮の横領、機密漏洩疑惑だった。

「これがそのデータよ」

美鈴が持参した録音データの内容を3人で確認する。

そのすべてが根も葉もない内容だった。

「義一が美咲を好いていて、俺と離婚したら嫁に貰ってもいいってどういうことだ!」

しかし、蓮が一番食いついたのはそこだった。
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