寡黙なダーリンの秘めた愛情
エレベーターの降階ボタンを連打する蓮。

「兄さん、待って!今から美咲ちゃんのところに行っても面会時間は過ぎてるわ。黒幕が揃ってる今日こそ一網打尽にできるチャンスなのよ?」

「ああ、そうだな・・・。悪い」

蓮はうつむいて、髪をガシガシとかきむしり、冷静になろうと深呼吸をひとつした。

「だが、悪い。少しだけ時間をくれないか」

「わかったわ。部屋に戻って待ってる」

美鈴は背を向けて部屋に戻っていった。

なぜ、美咲を好きだというこの思いを、彼女が守りたいというその思いを、ことごとく他人に邪魔されなければならないのか?

もしかして、自分が側にいるから美咲が不幸になるのだろうか?

そんなネガティブな思考こそが、相手の思う壺だというのに、意図せずに美咲を傷つけてしまう現状に蓮は追い詰められそうになっていた・・・。

蓮は無性に美咲の声が聞きたくなった。

蓮はスマホを取り出し、繋がらないとわかっている美咲のスマホに電話をかけていた。

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