寡黙なダーリンの秘めた愛情
「へえ、いい感じのところじゃん。御曹司様は、毎回出張の度にこんなホテルに泊まんの?」
蓮が由利亜とレンジを案内したのは、バーラウンジの個室。
京都市内の夜景が一望できるここは、ホテルのイチオシデートスポットだ。
蓮に化けることを放棄したレンジは、スーツのジャケットを脱いで、既にトイレでメイクも落としてきていた。
確かに素顔もイケメンだが、近くに寄ってメイクをしていない顔になれば、決して蓮と間違われることはないだろう。
だが、美鈴のいう通り、背格好や後ろ姿はそっくりだった。
「それで、どうして貴方は私になりすましていたのですか?」
無表情で問う蓮に対し、
「えっ?こいつに金で頼まれたからでしょ?」
と淡々と答えるレンジ。
「ちょっとレンジ、いい加減に・・・」
それ以上余計なことは言わせまいと、レンジを止めようとする由利亜だったが、
「いい加減にするのはあんただ」
という蓮の言葉に唇を噛んだ。
「写真に写ってたのもあんたなのか?」
「あー、由利亜とのキスとか抱き合ってるやつ?そりゃ、仕事だからね。頼まれればある程度のことはやりますよ。まー、美咲に見せつけるためとか言ってたけど、写真を撮って脅すとこまでは聞いてなかったな」
「お前が美咲の名前を呼ぶな」
「おーこわ」
睨み付ける蓮に、悪びれもせずレンジは肩をすくめた。
「なんのために美咲を追い詰める?腹いせなら俺に直接すれば良かっただろう」
蓮の言葉に、顔を上げた由利亜が笑う。
「私の物にならない蓮なんて、一番大切なものを壊されて苦しめばいい。・・・彼女に゛蓮は由利亜の所有物゛だと思われて、挙げ句のはてに捨てられれば、きっと、きっと私の所に帰ってくる・・・」
そう呟く由利亜はやはり正気とは思えなかった。
「だから、松本歩花を美咲の所にやったのか?義一とグルになって城之内家を追い詰めようとしたのか!」
「・・・八雲義一には少し有用な情報を流していただけよ。私は、レンジにつぎ込むためのお小遣い稼ぎに義一を利用してただけ。・・・歩花が何したかは知らないけど、今回は私の指示じゃないわ。美咲を手に入れたい義一の指示でしょ?いくら好きだからって、利用されてるのに気づかない歩花も馬鹿よね」
そう言って笑う由利亜に蓮は怒りが込み上げて仕方がなかった。
だが、水天宮の神様のお告げは゛争い事は騒がず゛だ。
できるだけ感情を押さえて、蓮は
「あんたのせいで、俺は、美咲との貴重な四年間を奪われたんだ。もう気が済んだだろう」
と言った。
「気が済むわけないでしょう?蓮が私のところに戻ってくるなら考えてあげてもいいわ。レンジと蓮が二人とも手に入ればこれからの生活は楽しそうだもの」
うっとりと視線を漂わせる由利亜はもはやまともではない。
「あんたの悪事は、会長と社長、元会長にも伝える。当然解雇になるだろうな。もちろん、俺があんたのところに行くことは絶対にない。もちろん許すこともない」
蓮の言葉にきょとんとする由利亜だったが、
「あーあ、長かった由利亜とのお遊びもこれでおしまいだな。俺は犯罪者に荷担はしない主義なんだ。美咲って子に直接手を出して、会社の情報を横流しとかしてたんなら話が違う。俺もここで降りさせてもらうよ。じゃあな、由利亜。少しはまともになれよ」
と言って立ち上がったレンジに、追いすがるように泣き出した。
「レンジ、嘘でしょ?私を捨てないわよね?レンは私を愛してるのよね」
「夢見てないで現実を見な。俺はこっちの彼女の家に泊まるから、金輪際、店にも来んな」
そう吐き捨てたレンジを追いかけて、
「いやよ、愛してるの。行かないで」
由利亜はそう叫びながら店を出て行った。
蓮が由利亜とレンジを案内したのは、バーラウンジの個室。
京都市内の夜景が一望できるここは、ホテルのイチオシデートスポットだ。
蓮に化けることを放棄したレンジは、スーツのジャケットを脱いで、既にトイレでメイクも落としてきていた。
確かに素顔もイケメンだが、近くに寄ってメイクをしていない顔になれば、決して蓮と間違われることはないだろう。
だが、美鈴のいう通り、背格好や後ろ姿はそっくりだった。
「それで、どうして貴方は私になりすましていたのですか?」
無表情で問う蓮に対し、
「えっ?こいつに金で頼まれたからでしょ?」
と淡々と答えるレンジ。
「ちょっとレンジ、いい加減に・・・」
それ以上余計なことは言わせまいと、レンジを止めようとする由利亜だったが、
「いい加減にするのはあんただ」
という蓮の言葉に唇を噛んだ。
「写真に写ってたのもあんたなのか?」
「あー、由利亜とのキスとか抱き合ってるやつ?そりゃ、仕事だからね。頼まれればある程度のことはやりますよ。まー、美咲に見せつけるためとか言ってたけど、写真を撮って脅すとこまでは聞いてなかったな」
「お前が美咲の名前を呼ぶな」
「おーこわ」
睨み付ける蓮に、悪びれもせずレンジは肩をすくめた。
「なんのために美咲を追い詰める?腹いせなら俺に直接すれば良かっただろう」
蓮の言葉に、顔を上げた由利亜が笑う。
「私の物にならない蓮なんて、一番大切なものを壊されて苦しめばいい。・・・彼女に゛蓮は由利亜の所有物゛だと思われて、挙げ句のはてに捨てられれば、きっと、きっと私の所に帰ってくる・・・」
そう呟く由利亜はやはり正気とは思えなかった。
「だから、松本歩花を美咲の所にやったのか?義一とグルになって城之内家を追い詰めようとしたのか!」
「・・・八雲義一には少し有用な情報を流していただけよ。私は、レンジにつぎ込むためのお小遣い稼ぎに義一を利用してただけ。・・・歩花が何したかは知らないけど、今回は私の指示じゃないわ。美咲を手に入れたい義一の指示でしょ?いくら好きだからって、利用されてるのに気づかない歩花も馬鹿よね」
そう言って笑う由利亜に蓮は怒りが込み上げて仕方がなかった。
だが、水天宮の神様のお告げは゛争い事は騒がず゛だ。
できるだけ感情を押さえて、蓮は
「あんたのせいで、俺は、美咲との貴重な四年間を奪われたんだ。もう気が済んだだろう」
と言った。
「気が済むわけないでしょう?蓮が私のところに戻ってくるなら考えてあげてもいいわ。レンジと蓮が二人とも手に入ればこれからの生活は楽しそうだもの」
うっとりと視線を漂わせる由利亜はもはやまともではない。
「あんたの悪事は、会長と社長、元会長にも伝える。当然解雇になるだろうな。もちろん、俺があんたのところに行くことは絶対にない。もちろん許すこともない」
蓮の言葉にきょとんとする由利亜だったが、
「あーあ、長かった由利亜とのお遊びもこれでおしまいだな。俺は犯罪者に荷担はしない主義なんだ。美咲って子に直接手を出して、会社の情報を横流しとかしてたんなら話が違う。俺もここで降りさせてもらうよ。じゃあな、由利亜。少しはまともになれよ」
と言って立ち上がったレンジに、追いすがるように泣き出した。
「レンジ、嘘でしょ?私を捨てないわよね?レンは私を愛してるのよね」
「夢見てないで現実を見な。俺はこっちの彼女の家に泊まるから、金輪際、店にも来んな」
そう吐き捨てたレンジを追いかけて、
「いやよ、愛してるの。行かないで」
由利亜はそう叫びながら店を出て行った。