寡黙なダーリンの秘めた愛情
「レンジに捨てられた赤池由利亜が何をするかわからない。義一も美咲を狙っているらしいし俺は明日の朝イチで東京に帰ろうと思う」

「そうだな。明日朝には代わりの者を寄越すように秘書に伝えよう。蓮は美鈴と一緒に帰りなさい」

蓮と美鈴は、朝6時の新幹線で東京に帰ることにした。

蓮はシャワーを浴びると、ホイットニーに電話をする。

「美咲とホイットニーの他に、新型人工心肺装置の情報を知る人物はいないか?」

「長友主任くらい。・・・でも彼は萌の彼氏だし、美咲のことも大切に思ってる。裏切ったりはしないと思うわ」

ホイットニーには、赤池由利亜が蓮に白状したことをすべて話した。

ホイットニーがM州立大学の教授と結託して裏切ろうとしている説も考えられないことはない。

疑いだしたら誰のことも信用できなくなるのだ。

だが、疑心暗鬼になり美咲の親友まで疑うことはよそうと、人のよい蓮は思い直す。

もし、ホイットニーと義一、義次が共犯なら、とっくの昔にT光電から新型人工心肺が発売されているはずだろう。

そんな蓮の戸惑いを感じたのか、

「・・・蓮は私のことは疑わないの?」

とホイットニーが質問した。

「美咲のことを安心してあずけられる上に、俺のポケットマネーから奨学金貸与を決めた優秀なブレインだ。親姉妹よりも信頼している」

「フフ・・・!やっぱり基準は美咲なのね」

蓮の答えに、ホイットニーは電話口で大声で笑った。

ジムの声も聞こえたから一緒にいるらしい。

「とにかく、明日の朝そっちに帰る。研究室のデータに異常はないか確かめておいてくれ」

蓮はそう言うと、通話を終了した。
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